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雨。水温15.6度。透明度6m。正直、潜る前のコンディションは、お世辞にも"良い"とは言えなかった。それでも、忘れられない海になった——2026年4月30日、三重県・方座浦(ほうざうら)。狙うは、海中一面のミズクラゲ。
Dive Log — 2026.04.30 / 中平瀬
- Weather 雨 / 19℃
- Water Temp 15.6℃
- Visibility 6〜8m
- Max Depth 19.4m
友人のインスタから始まった、この海
方座浦は、僕にとって長らく「行ってみたい場所」だった。
きっかけは、ある友人のインスタグラム。 "くらげまみれ"の海中写真が流れてくるたびに、画面の前で息を呑んでいた。
いつか自分も、あの中に飛び込んでみたい。
そう思いながら、なかなかタイミングが合わずにいた。
ある日、その友人が「方座浦行きたい人〜」とインスタで呼びかけているのを見つける。
迷わず手を挙げた。
集合場所は、三重・松阪駅。 友人は関西から自家用車で。もう一人と合流して、3人での方座浦行き。 僕は関東組だったので、夜行バスで松阪まで入り、駅でピックアップしてもらう段取りになった。
つまり、運転はぜんぶ友人まかせ。本当に、ありがたい。 助手席で夜明けの紀勢の景色を眺めながら、何度も思った。
繋がりって、本当に大切だ。
初めて訪れる海への入口は、たいてい**"人"**なのだろう。
方座浦ってどんな海?
方座浦は、三重県南伊勢町にある小さな漁港。 南北に深く切れ込んだ湾の奥に、ダイビングサービスがいくつか並んでいる。
僕たちが今回お世話になったのは、**方座浦ダイビングアシスト(通称 HDA)**さん。
このエリア、観光地ガイドではほとんど名前を見ない穴場だ。 だが、ダイバーのあいだでは"ミズクラゲの聖地"として、毎年4〜5月に話題になる場所でもある。
雨の日でも、湾内なので波は穏やか。 透明度は南国の海ほど抜けない(この日は6〜8m)が、その代わり、生き物の濃さは段違い。
「青を見に行く海」じゃなくて、「生き物に囲まれにいく海」。 — 方座浦・中平瀬
そんな表現がしっくりくる海だった。
Dive No.01 / 10:02 → 10:48
中平瀬 ── "クラゲシャワー"のなかへ
| 項目 | データ |
|---|---|
| エントリー → エキジット | 10:02 → 10:48(46分) |
| 平均水深 / 最大水深 | 13.4m / 19.4m |
| 水温 / 気温 / 天気 | 15.6℃ / 19℃ / 雨 |
| 透明度 | 6〜8m |
| 装備 | ドライスーツ |
ロープを伝って潜降していく。
水深10mを切ったあたりから、視界の端に白い塊がぽつぽつと増えてくる。
そして、15mまで降りた瞬間──息を呑んだ。
海中、一面、ミズクラゲ。 — 水深15m, 中平瀬
上を見ても、横を見ても、下を見ても、どこを見てもクラゲ。 小ぶりなものから手のひらサイズまで、ふわふわと漂いながら、僕たちを包み込んでいる。
「クラゲの群れの中にいる」というより、「クラゲシャワーを浴びている」感覚に近い。
"ピリッ"の正体
カメラを構えて、群れの中に突っ込んでいく。
そりゃ、当たる。
頬に、ふわっと触れる感触。 そして次の瞬間──ピリッ。
ほんの一瞬、電気が走るような小さな刺激。 水深15mで「あ、いま刺された」と気づくくらいの、控えめな主張。
慌てる必要はなかった。 痛みは数秒で消え、そのまま撮影を続けられる程度。
ただし、港に戻るまではちょっと気にはなっていたのが正直なところ。 「跡が残っていたらどうしよう」「腫れたら嫌だな」と。
エキジット後、鏡で頬を確認する。
刺激は確かに感じたのに、赤みもなく、ミミズ腫れもない。
3人で潜ったが、誰ひとり目に見える跡が残った人はいなかった。
「あ、ミズクラゲってこういう毒なんだ」と、初めて身体で理解した瞬間だった。
僕の場合、海中ではフードをかぶっていたので、顔まわりはまだマシなほう。それでもカメラを向けて群れに突っ込めば、頬や顎には当たる。肌が敏感な人や、刺激が気になる人は──
- ワセリンを露出部に薄く塗っておく
- 念のため炎症止めの薬を持っていく
くらいの備えはあったほうが安心。ただ、僕個人の感覚では「軽い静電気くらい」のレベル。そこまで身構えなくても大丈夫、というのが正直なところだ。
Dive No.02 / 12:08 → 12:55
中平瀬 ── クラゲが"魚礁"まで届く日
| 項目 | データ |
|---|---|
| エントリー → エキジット | 12:08 → 12:55(47分) |
| 平均水深 / 最大水深 | 13.2m / 17.4m |
| 水温 / 気温 / 天気 | 15.6℃ / 19℃ / 雨(午前と同じ) |
| 透明度 | 6〜8m |
| 装備 | ドライスーツ |
2本目も、同じ中平瀬。
「同じポイント2本?飽きないの?」と思うかもしれない。
飽きるどころか、別のポイントみたいだった。
理由は2つある。
ひとつは、ミズクラゲの出現範囲が、魚礁(ぎょしょう)まで及んでいたこと。 そしてもうひとつは、僕自身の眼が、1本目とは別物になっていたことだ。
1本目は完全に「初見」だった。 「どんな景色なんだろう」「この光と密度をどう切り取れば伝わるんだろう」──シャッターを切りながらも、頭の中ではひたすら考え込んでいた。海の輪郭をまずは"掴む"ダイブ。
2本目は違う。 1本目で掴んだ感覚があるから、最初から狙いに行ける。 「あの構図でもう一度」「次は手前にクラゲを入れて」「ヒロメの森は三層で」──頭の中にイメージを描いてから、ファインダーを覗く。
同じ場所でも、自分の眼が変われば別の海になる。 — Dive No.02
普段は撮れないコラボ写真
通常、ミズクラゲは中層〜表層に多い。 一方、魚礁や岩場には小魚やソフトコーラル、海藻が広がる。
この2つが交わるシーンは、ふだんなかなかお目にかかれない。
それが、この日は重なった。
ファインダーを覗きながら、何度もシャッターを切った。 ミズクラゲと魚礁、ミズクラゲと小魚の群れ── 普段なら「それぞれ別の写真」になるシーンが、1枚に収まる。
写真好きとしては、これだけで来た甲斐があった。
ヒロメ × ソフトコーラル × ミノカサゴ × 小魚
そして、この日のもう一つのハイライト。
ヒロメという大きな海藻が群生しているエリアに、ピンクや赤のソフトコーラルが混じり、その上を小魚が乱舞している。
そして、その真ん中に堂々と佇んでいたのは──ミノカサゴ。
「これ、絵に描いたような海じゃん」と、心の中で笑った。
小魚は神経質に動くのに、ミノカサゴは堂々としている。 背景には海藻、近景にはソフトコーラル、まわりには無数のシルエット。
写真の神様が「全部詰めとこうか」と、いたずらしたみたいなシーン。 — Photographer's Note
ヒロメの葉が水中で揺れる音が聞こえそうなほど、この場に流れる時間はゆったりしていた。
Gear & Conditions
装備とコンディションの総括
ドライスーツでちょうど良かった。 水温15.6度・気温19度・雨。 ウェットだと、上がってからの寒さが地味にきつそうな日だった。
| 持っていって良かったもの | 理由 |
|---|---|
| ドライスーツ | 4月末・水温15度台では必須レベル |
| フード | クラゲ対策+保温の二刀流 |
| ワイドレンズ | 魚礁 × クラゲのコラボを撮るのに必須 |
| ストロボ | 緑がかった海中で、被写体を浮き立たせるため |
まとめ:地味な日に、濃い海で出会うということ
雨。水温15度。透明度6〜8m。
数字だけ見れば、誰も飛びつかないコンディション。
でも、潜ってみないと分からない海が、この国にはまだまだある。
方座浦・中平瀬は、その代表格だと思う。
「どこかいい海ない?」と聞かれて、誰もが沖縄や慶良間を答えるなかで、 **「三重の方座浦、ミズクラゲがすごいよ」**と返せる引き出しがあるのは、 ダイバーとしてちょっと誇らしい。
そして何より── この海にたどり着けたのは、インスタで呼びかけてくれた友人のおかげ。
繋がりって、やっぱり大切だ。
次は誰かを誘って、また行きたい。 そのときは、君も手を挙げてください。
Notes for the Next Diver
- Best Season
- 4〜5月(ミズクラゲの大群を狙うならこの時期がピーク)
- Access
- 三重県南伊勢町。湾の奥に位置するため、雨でも波は穏やか
- Shop
- 方座浦ダイビングアシスト(HDA)
- Point
- 中平瀬(なかひらせ)。ミズクラゲ × 魚礁のコラボが狙える稀有なポイント
- Suit
- 4月末はドライスーツ推奨。フード必携(保温+クラゲ対策)
- Camera
- ワイドレンズ+ストロボがあると、緑の海でも被写体が立つ
- Skin Care
- 敏感肌の人はワセリンで露出部を保護。3人潜って跡が残った人はゼロだった
この海で会えるかもしれない生き物
- ミズクラゲ(4〜5月の大群が圧巻。狙うならこのシーズン)
- ミノカサゴ
- 小魚の大群
- ヒロメ(大型の海藻、群生エリアあり)
- ソフトコーラル各種(ピンク・赤の鮮やか系)
水中動画も後日アップ予定です。出来上がったら、この記事に埋め込みで追記します。
次の海で、また。